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毛は、爪、汗腺、皮脂腺、とともに皮膚の付属器とも呼ばれます。毛の構造の前に、まずは皮膚の断面図から見てみると、上から表皮、真皮、皮下組織の3層構造でできています。毛はこの3層構造の皮膚が落ち込んだポケットのようなところにすっぽり入っているのです。毛はもともと表皮の一部が皮下組織まで落ちこみ、角質層が変形して「毛」という形で伸びていったものです。

 

毛の名称は、皮膚表面に見えている部分を毛幹、皮膚の中に入り見えない部分を毛根といいます。毛を包んでいる袋のようなところが毛包です。毛包には立毛筋(起毛筋)という鳥肌を立てる筋肉や皮脂を分泌する皮脂腺、また腋の下など特定の部位ではアポクリン汗腺(大汗腺)が開口しています。このアポクリン汗腺は腋、乳輪、外陰部、肛門周辺など限られた部位にあり、性ホルモンの影響を受けて思春期に分泌が活発になり独特の臭気を発します。アポクリン汗腺のある場所の毛はこの性ホルモンの影響もあり濃く太い毛になっているという特徴があります。

 

毛を真横に輪切りにしてみると3層構造になっています。中心部を毛髄質、真ん中の層を毛皮質、外側を毛小皮といいます。毛髄質が多い毛ほど硬い毛で軟毛と呼ばれる軟らかい毛には存在しません。毛の大部分を占めるのは毛皮質で毛の主体をなしています。メラニンを含んでおりこの量によって毛の色が決まります。毛小皮はキューティクルとも呼ばれ角化した細胞が重なりウロコのように見えます。毛の内部が傷つかないように保護の役割をしています。

 

成長をしている毛の下部は球状になっています。この部分を毛球といい血管や神経をもった真皮が入り込む毛乳頭、毛乳頭の上に1列に並ぶ毛母細胞が存在します。毛母細胞に毛乳頭から栄養が送られることで毛は細胞分裂し成長していきます。

 

毛の総数は全身で約140~150万本とされています。中でも多いのは頭部で約10~15万本もあります。毛の主成分はケラチンというタンパク質です。毛と爪は硬ケラチン、皮膚の角質層は軟ケラチンです。毛は太い毛から細い毛までさまざまですが太い毛を硬毛、細い毛を軟毛といいます。個人差はありますが、頭、腋、陰部などの毛は硬毛で、顔のうぶ毛や腕などの毛は軟毛です。軟毛は軟らかいので毛髄質はありません。また、胎児のころに生え、胎生期の終わりごろに脱落する毛を毳毛といいます。生まれたての赤ちゃんを沐浴したときに抜け落ちるのがこの毛です。毛は、大切な部分を保護するために生えているといえます。

 

毛の形状は直毛、波状毛、球状毛の3つに分類されます。日本人を含むアジア系に多いのは直毛、欧米人のようなウェーブ状の毛を波状毛、アフリカ系の人に多い縮れた毛を球状毛といいます。この形は毛包の形によるもので、毛包が曲がっていれば成長していく毛も曲がった状態に成長するということです。
日本人の毛の太さは、細い毛で0.06~0.07mm、普通の毛で0.08~0.09mm、太い毛で0.1~0.12mmくらいとされています。

 

毛の色の違い毛皮質に含まれるメラニン色素の量によって決まります。メラニン色素は毛球の毛母によって作られます。メラニン色素には褐色のユーメラニンと黄色のフェオメラニンがあり、2つのメラニンのバランスによっても毛の色は変わります。日本人は褐色のユーメラニンが多く、色素も多いため黒い髪です。赤毛や金髪の人はフェオメラニンが多く、また赤毛は鉄分を、金髪は気泡を多く含んでいます。金髪がキラキラ光って見えるのはこの気泡のためです。老化現象によって起こる白髪はメラノサイトというメラニン色素を作る細胞が色素を作り出せなくなってしまうことが原因です。